スマホの普及とか、仮想通貨など目を向けると未来を感じるものや出来事ってあるけれど、普段暮らしていて見ている建物や乗り物のデザイン、その内装、食器、寝具など昔から変わらない物ばかりに囲まれて暮らしていて、太古の人間の夢をみているんじゃないかと思ってとても不安になる事が増えた。なんで不安になるのかな。例えばこのコップなどは1万2000年前の人だってこれは新しい物だと思って使ってはいなかったと思う。いつから我々はコップを使うようになったのか思いを巡らすことはあれど。新しい感覚、新しい概念に触れたいし作りたいと思って生きてきたけれど、当然何かと比較しなければ新しいという感覚は無い。新しい古いという感覚は時間に似ているけれど生き方の哲学でもある。
「新しくないといけない/新しくてもいい。古くないといけない/古くてもいい」
たまに懐かしさを感じる事があるけれど、懐かしいってなんなんだろう。必ずしも古い物だけに感じる感覚では無い。僕は割と感覚も料理だと思ってるから、懐かしさは強烈な香りがするし、少しだけ使う事により効果的なスパイスだと考える。あとは距離がある物に対して感じるものだとも思う。いつも囲まれている物に対して懐かしさはあまり感じる事がないため。
最近は懐かしさを感じる事がなくなった。何を見ても古いなと感じる。
(でも最近観たserial experiments lainというアニメは古いアニメだけどめちゃくちゃ新しいと感じた。カイバというアニメにも新しさを感じた。ぼんやりとした新しさをではなく、明確な意図を持って未来に伝えないといけないメッセージがそのまま作品になっておりどちらも素晴らしかった。感服した。)
その原因はやっぱりサブスクでいろんな時代の音楽を消費しまくっているからなのかもしれないな。裸のラリーズ、落とせばただのノイズという名言ここに極まれり。でも周りの友人たちはP2Pでラリーズを落としていた人が多くて、彼らはその後もラリーズを愛している若者たちだな。僕もそうだし。
ここ2年くらいは90年代のオルタナティブロック周辺を一つ一つのバンドの軌跡をなぞるように聴いているんだけど、消費されすぎて古くなったものと消費され尽くされないばかりか新しい概念を纏って新しくなったものとに別れるなと感じる。そうなった時に自分は明らかに後者に魅力を感じるし、もっとその新しさを解き明かしたいと思って何度も聴いたり映像を観たり、それらにまつわる書籍を読んだりする。
新しさの感覚に取り憑かれているんだなと思った。まだ感じたことのない感覚にアクセスしたい感情に。
だけどそれは人と共有する事が難しいし、音楽は共有するものだから伝える事を考えるとまた頭を抱えて寝込んでしまう。
昨日は大粒の泪にてグッドミュージック共有会のパーティがありGASOLINE・STANDでライブした。
NISSEKI blueをフィジカル化してくれたMangalitza Recordsの井上Uさんが今年死んだ。結局一度も会えなかったんだけど、minna kikeruで僕を見つけてくれてbandcampでメッセージをくれたところから始まったリリースプロジェクトだった。LINEや通話でたくさん応援してくれてて熱い人だった。今頑張れてるのは完全に彼のおかげ。
GASOLINE・STANDはコロナ禍に突入してバンド活動ができなくなり始めた宅録だった。その時にはギターの音も好きじゃなくて、若者でも無いけれどギターの音がある音楽を聴けない感じになっていた。弾くのも面白くなかったし。だからギターを使わずにやるプロジェクトとして始めた。だけど井上さんはギターを弾きながら活動した方が良いとアドバイスしてくれていた。yeuleみたいなイメージを抱いているのかなと漠然と思っていたんだけれど、そこからギターという楽器について考える時期が始まって、90年代のオルタナティブロックを検証する様に聴く様になった。ギターも買って弾き方やコード、音についてまた考える日々が始まった。バンドも再開して、メンバーも再編成して、レコーディングも始まった。振り返ると順調にやってて良かったねという気持ちになって来たけど、主観的には毎日死ぬ程のダルさと向き合ってギリギリ生存している感じなんですが。コロナ後遺症なのかな。
それで昨日はそれで初めてギターを弾きながらのガソスタをやったんだけど、色んな人にしっかりフィードバックを貰えてやって良かったなと思った。今はギター弾くのが一番楽しい。ギター弾くのが好きになったところから音楽を始めた事を思い出した。ただ練習して弾くだけだといつか飽きる事だと思うけど、何度もリイシューされ続けて形を変えずに生産され続ける死んだ木は幽霊よりも存在感のあるフィードバックを鳴らす事ができるという点において他の楽器を超えている。
昨日はウンラヌのギタリスト祥三君もギターインプロを演奏していたんだけど、めちゃくちゃ良かった。信じられない演奏だった。それこそVOXのキャビネットから出てくる音が幽霊の様な存在感を持っていた。僕は幽霊を見た事ないし、存在を感じた事無いけれど世の中には幽霊を見る人や、心霊コンテンツに溢れている。存在しないかもしれないのに物凄い存在感だなと思う。そんなに勿体つけていざ正体を現した時にきっと祥三君のギターのサウンドと比べたら果たしてどちらが凄いのか。そんな事を考えた。カート・コバーンがエレキギターは死んだ木だと言っていたけれど、音は死んだ木から出てくるゴーストなのだと言いたかったのかなと思った。絶対そうだと思う。ゴーストは人をもっと怖がらせてほしい。戦争は病気の恐怖ではなくてゴーストの恐怖で絶叫したい。怖すぎる!!!って。エレキギターにもそう思う。
イベントの終盤BONGBROSのP.Eさんがこの曲をかけた。
感動しました。