pavement

pavementはローファイの代名詞だけど、ローファイの概念ってジャンルとしては定まってないと思う。

pavementっぽい、sebadohっぽいバンドがローファイって言われてきたけど、今はインディーロックと呼ばれるようになったよね。ローファイって音質の事だから、下手ウマ(に聴こえる)バンドをローファイと呼ぶことへの違和感がそうさせたのかな?と思ったりするんだけど。(例えばハイテクなものを使えない人のことをアナログ人間と呼んだりする事に似てるような。それが高じて電気を使わないものをアナログと呼んでるシーンなどを見たりするけど、それは違う気がする。多分使ってる人はアナログテレビ世代っていうニュアンスがあるんだろうな。)

90年前後はそんなバンドばかりだったと思うし。現代も90sリバイバルでヴェイパーウェーブを経たインディーロックの再解釈が行われていると思う。フジロックに出演していたsnail mailもpavementyo la tengoをリリースしているマタドールからデビューしたインディーロックの若いロックスターだし。サウンド聴くと腑に落ちるものがある。

 


インディーズというのはにDIYSST(1978〜)というレーベルを始めたBLACK FLAG、同じくdischord(1980〜)というレーベルを始めたマイナースレットという二つのハードコアパンクからはじまった。80sにMTVの影響で見た目がどんどん派手になる商業HR/HM勢に対抗した時にハードコアが二つのジャンルを生み出した。ハードコアパンクの速さと激しさを吸収したメタルとしてスラッシュメタル。メタルの重いリフを要素を取り入れたパンクとしてのグランジ。どちらもやがて世界に広がるジャンルなんだけど、メタルやるような人たちがパンク精神をうっかり取り込んでしまったり、パンクスなのに流行っていたメタルのサウンド(彼らの多くは表立って告白できなかったかもしれないけれどきっとキッズの時にラジオから流れるヘヴィメタルに首を振っていただろう)に抗えなくて取り入れてしまったり、何が良いとか悪いとかが混沌としていた時期だと思う。そういった商業ベースではない形で初めて生まれたロックの成れの果てがどんどんインディーズとしてDIYで活動していく。それでもハードコアはライオットするための音楽だったから怒りや退屈を持っている若者たちの支持を集めていく。スタジアムで観戦するエンタメになってしまったロックがダンスミュージックに戻ってきたような感じだったのかもと当時のことを想像する。

 


そんな中で彼らに触発されてキャルビン・ジョンソンがKレコーズ(1982〜)を設立。このレーベルが初めてローファイと呼ばれるインディーロックを世の中に提示した。KレコーズからリリースされるバンドはDIYハードコアパンク精神を受け継いではいるけれど、ハードコアパンクサウンドをサンプリングしなかった。誰も真似できない(しようと思わない)音楽を作るという意味で作曲にパンク精神を移植した音楽をリリースし続けている。似たようなサウンドが増えるとそれはムーブメントになるけれど、そもそもがアウトサイダーの集まりだという事を考えるとパンクが群れること自体がナンセンスなのかもしれないと思わせられる。音楽ジャンルはコード進行とリズムで名前をつけられるという前提で言うと、Kレコーズがはじまって、ロックにオルタナティブという概念が導入されたのではないか。1曲の中で脱臼し続けるという意味において。Kレコーズはカート・コバーンが宣伝しまくった事で有名になったけれど、それでも商業的に成功した音楽家は少ないと思う。Beckはなぜかどう考えても成功した。https://ja.m.wikipedia.org/wiki/K%E3%83%AC%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%82%BA

 

pavementは89年に結成された。インタビューでスティーブン・マルクマスが言ってた。

 

僕は自分の歌が下手だと思ってた。
っていうか、よくあるこどだろうけど、ヴォーカルとして歌ってみるのが怖かったのかな。

でもこれ幸いというか、80年代後半のインディ・ロック・シーンには、ビート・ハプニングとかパステルズがいたじゃない?
音程の不安定なバンドがさ(笑)。
「これなら僕にもできる、大したことじゃない」って安心したんだ。
スティーヴ・マルクマス / クロスビート1997年8月号)

http://sound.heavy.jp/grunge/band/alternative/5/pavement.html

 

ローファイの先駆者たちに勇気をもらって、sonic youthが変速チューニング(サーストン・ムーアはギターの技術に自信がなかったので変速チューニングを用いてリフを作る作曲スタイルになった)を用いたリフによって耕した土壌の上でpavement(ほとんど変速チューニングで作曲されている)は開花した。

 


90sインディーロックのサウンドと、00sのメロコアが同時並行にリバイバルで流行ってる印象があるけど、インディーロックのサウンドはロックバンドに流行っていて、メロコアサウンドはラッパーやハイパーポップのクラブミュージックの世界で流行ってる。これってサンプリングの概念の解釈の違いが現れている現象だと思うんだよね。

 


バンドは楽器のプレーヤーの集まりだから、ロックバンドは特に使用する楽器からサンプリングについて考える機会が必然的にある。例えばエレキギターがいつまで経ってもフェンダーギブソン(のつくったシステムで)しかないこと、アンプも然り。それら有名なメーカーが出し続ける新商品のほとんどは60年代のモデルのリイシューばかりであること。その結果、その時代のオリジナルが重宝されてヴィンテージと定義され続けていること。どんな音楽も時代によって変化し続けているはずのに、エレキギターは変わらない。70年代にジミヘンが弾いたストラトは当時作られたばかりの楽器だった。古くなって良い音になったのか、当時の技術が良かったのか、当時の演奏にエレキギター奏者全員が憧れているのか、いろんな疑問が生まれるけれど、長い間ロックバンドというフォーマット(エレキギター、ベース、ドラムス)が手っ取り早い魔法陣だったことでロックのサウンドが進化しつつも楽器とそのサウンドはほとんど変わらない時代が続いてきたことは間違いない。

自分にも音楽ができるかもしれないと言う衝動からエレキギターを買ってとにかく弾いてみたけれど、こんな古い楽器で新しい音楽ができるのだろうかと不安と膝を抱える。評価されたいという気持ちと、評価されている音楽はダサいという葛藤。そんな葛藤によってロックは進化してきた。

でももうそんな呪縛からは全員が解き放たれているはず。ヒップホップが完全にポップスの主役になった今、かつてのエレキギターが担っていた役割をiPhoneが請け負っている。やっと古い楽器から自由になれたのか?

古い楽器から自由になっても別の呪縛がそこにあった。タイプビートのカルチャーはサブスク以上に文化的な消費速度を高めていると思う。今はラッパーたちはYouTubeでタイプビートと呼ばれるビート(○○タイプビートという名前だと、○○みたいなラッパーっぽいビートという意味。ビートメイカーはそうやって有名なラッパーっぽいビートを作ってアップロードする。有名なラッパーにビートを使ってもらえると名前が売れる)を賃貸したり使用権を買ったりして、それにラップを乗せている。機材から自由になれても売れることでしか実在できない競争率の世界になってしまったので、音ネタではなくスタイルをサンプリングし続けることが主流になった。(と言ってもまだまだトラップベースの音楽だから808やオートチューンがエレキギターと取って代わったくらいの感じなのかもしれない。そういう意味では古い楽器の呪縛からは逃れられていない。)

この消費感覚の速さって呼吸に近いものがある。でもsnsネイティブの子供たちがDiscordやサンクラで盛り上がってるのはコロナ禍の希望の部分なのかもしれない。digicoreについての記事が面白いです。https://www.google.com/amp/s/fnmnl.tv/2022/03/29/144800%3Famp%3D1

 


かと言っても彼らも当然歳をとり、ほとんどのアーティストは食えないままだろう。いつまでこの状況がどのペースで続くのかはわからないけど、現実で会えないとか、ネット弁慶になってしまうとかもあり得るのかもしれない。

ハイハイウーピーの休止についての記事を読んだ時、こういう事アーティストでも起こりうると思った。https://note.com/kusyami/n/n0371a58225bd

 


話を少しまとめると、ロックバンドというフォーマットが一番手っ取り早い魔法陣だった時は音楽をやる人は音楽をやるために楽器を入手して、メンバーに出会わないといけなかった。

現在は音楽をやりたい若者はすぐにガレージバンドサウンドクラウドで音楽を始めている。彼らにとっては音とネットでの繋がりが全てだから孤独を武器にして今の波に乗れるスタイルをサンプリングして作り続けてアップロードし続ける必然性がある。00sのサウンドやファッションを取り入れているのは波に乗るために必要だからであり、そうである必然性はない。

今若くしてロックバンドをやっている人たちは親が楽器をやっていた人や近所に音楽的なコミュニティがあって、自然とロックバンドやる必然性が生まれた人たちが多いんだと思う。彼らは古い楽器を用いるという呪縛の中にいるけれど、その先端で音楽を作っているだけだとも言える。90sインディーロックリバイバルと言われているけれど、それは売上の上での話でしかなくて、今現役のバンドはpavementであれダイナソーJrであれ、Pixiesであれ、本当に現役なんだなと思う。それは自分から売れ線の波に乗ろうとしないけど、散々売れた名曲に影響を嫌というほど受けてきたという音楽への愛憎由来の葛藤、との向き合い方から感じる。

例えばSUPERORGANISMの脱臼させ続けるサンプルの散りばめ方や美しいメロディラインにはpavementをとても感じるけれどpavementをサンプリングしたようには感じない。SUPERORGANISMは変わらないと思うからそのうちすぐに忘れ去られてしまい、もしかしたら解散してしまうかもしれないと思う(活動がハードだから)。偶然フランク・オーシャンにピックアップされてデビューしたけれど、ニルヴァーナとあんまり変わんないんじゃないかと思う。スタイルが(自然体なので)偶然時代にハマりすぎていたせいで、持て囃され過ぎてしまい、頑張りすぎているだけなのでは。ただ、DIYオルタナティブな音楽を作っている地平に住んでいたオオサンショウウオ的な何かのように思える。だけど彼らは楽器に縛られていないからウケる。